www.engineering-japan.com

ソフトウェア定義車両向けマルチドメインSoC基盤

ルネサス エレクトロニクス株式会社が、第5世代R-Car SoCを中心に、SDV開発を支えるオープンな車載ソフトウェア基盤を拡張。

  www.renesas.com
ソフトウェア定義車両向けマルチドメインSoC基盤

ルネサス エレクトロニクス株式会社は、第5世代R-Car SoCに対応する「R-Car Open Access(RoX)プラットフォーム」を拡充し、ソフトウェア定義車両(SDV)向けの開発環境を強化した。新たにR-Car X5Hの評価ボードとソフトウェア群が提供され、車載マルチドメイン統合を前提とした開発を早期に開始できる。

SDV時代における開発基盤の要件
SDVでは、ADAS、車載インフォテインメント(IVI)、ゲートウェイといった複数の車載ドメインを、単一または統合された計算基盤上で同時に実行することが求められる。このため、ハードウェア性能だけでなく、仮想化、OSの共存、安全要件への対応、ならびにソフトウェア再利用性が重要な設計要素となっている。

RoXプラットフォームは、こうした要件に対応するため、SoCとソフトウェアスタックを分離しつつ、標準化された開発環境を提供することを目的として設計されている。今回の拡充により、第5世代R-Car向けの開発環境が具体的な評価・実装段階に移行した。

R-Car X5H向けRoX Whiteboxの構成
今回提供が開始された「RoX Whitebox」は、R-Car X5H用の基本ソフトウェアであるRoX SDKを基盤とし、Linux、Android、XENハイパーバイザを組み合わせて構成される。加えて、AUTOSAR、EB corbos Linux、QNX、Red Hat、SafeRTOSなど、パートナ各社のOSおよびミドルウェアにも対応する。

この構成により、ユーザはADAS、レベル3/4自動運転、インテリジェントコックピット、車載ゲートウェイといった用途に向けたソフトウェア開発を、単一の開発環境上で開始できる。ADASソフトウェアスタックと組み合わせた場合、リアルタイム認識処理やセンサフュージョンを実装可能であり、生成AIや大規模言語モデル(LLM)を用いたヒューマンマシンインタラクションの検証にも対応する。

さらに、Candera、DSP Concepts、Nullmax、Smart Eye、STRADVISION、ThunderSoftといったパートナが提供する量産グレードのアプリケーションソフトウェアスタックが利用可能であり、車載ソフトウェアアーキテクチャのエンドツーエンド開発と、開発から市場投入までの期間短縮を支援する。


ソフトウェア定義車両向けマルチドメインSoC基盤

CES 2026でのマルチドメイン統合デモ
ルネサスは、2026年1月6日から米国ラスベガスで開催されるCES 2026において、R-Car X5Hを用いたマルチドメインデモを公開する予定である。このデモは、従来のR-Car Gen 4向け構成からR-Car X5Hへスケールアップしたもので、RoXプラットフォーム上で複数ドメインの統合動作を検証する。

XENハイパーバイザによる仮想化環境のもと、RTOSやエッジAI機能に加え、LinuxおよびAndroid上でADASおよびIVIスタックを同時に動作させる構成となっている。最大8台の高解像度カメラ入力と最大8系統のディスプレイ出力をサポートし、ディスプレイは最大8K×2K解像度に対応する。これにより、高度なセンサ統合と視覚情報処理を前提としたSDVアーキテクチャの実装例が示される。

マルチドメインSoCとしてのR-Car X5Hの技術的特徴
R-Car X5Hは、3nmプロセス技術を採用した車載向けマルチドメインSoCであり、ADAS、IVI、ゲートウェイといった複数機能を単一チップ上で同時に実行できる設計となっている。5nm世代のデバイスと比較して、消費電力を最大35%低減するとされている。

演算性能面では、32個のArm Cortex-A720AE CPUコアにより1000k DMIPS以上を実現し、6個のCortex-R52ロックステップコアによってASIL Dレベルの安全要件に対応する。AI処理性能は最大400TOPSで、チップレット追加によりAIアクセラレーションを4倍以上に拡張可能である。グラフィックス処理については、最大4TFLOPS相当のGPUを搭載し、ミックスド・クリティカリティ技術によって安全性と高負荷処理の両立を図っている。

www.renesas.com

  さらに詳しく…

LinkedIn
Pinterest

フォロー(IMP 155 000フォロワー)