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07
'25
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Teledyne Flir OEM
Teledyne FLIRとVSI Labs社の試験で明らかに―自動車メーカーが夜間のAEB装置に対する連邦自動車安全基準をクリアするうえでサーマルイメージングがいかに有効か
2029年から義務化されることになるFMVSS No.127規則の試験において、融合式サーマルイメージングPAEBシステムが既存の最新AEBシステムを上回る結果を収めました。
カリフォルニア州ゴレタ — Teledyne Technologies Incorporatedの一部門であるTeledyne FLIR OEMはVSI Labs社と共同で、新しい連邦自動車安全基準(FMVSS)No.127規則が定める対歩行者衝突被害軽減ブレーキ(PAEB)のテストシナリオに沿った試験の結果をご報告します。VSI Labs社が研究に用いている車両には、Teledyne FLIR OEMの最新の衝突被害軽減ブレーキ(AEB)用サーマルカメラが搭載されています。この車両はすべてのテストに合格しましたが、ほかの2024年式の市販車3台については、夜間を想定した2つ以上のテストシナリオで不合格となりました。
FMVSSのNo.127規則は、2029年9月までに車両総重量10,000ポンド(4,536 kg)以下のすべての乗用車および小型トラックへのPAEBシステム搭載を実現することを課しています。この新規制が求めるのは、PAEBシステムによって、さまざまな照明の条件下やさらに高い車速で歩行者を検知しなければならないことです。交通事故による歩行者の死亡者数が過去最高に近い水準で推移しており、特に2022年には歩行者死亡者数の77.7%が夜間に発生していることから、この規制は特に重要とされています。
米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)は昨年、テストを通じてFMVSS No.127規則の要件を満たすことが可能であると実証しました。たとえば同局がテストした5台の市販車のうち最小・最軽量であるトヨタ社の2023年式カローラ・ハイブリッドXLEは、要求された最高速度ですべてのPAEBテストに合格しています。しかしNHTSAがテストした他の4台の市販車では、ヘッドライトのロービーム夜間テストについて1つ以上の項目で不合格でした。速度や車両重量の増加と視界の不良が相まって、従来のAEBセンサ・スイートでは対応が難しかったものと考えられます。
VSI Labs社は、研究用車両のフォード社製フュージョン・ハイブリッドに搭載した熱画像融合式PAEBシステムに加え、最新の2024年式市販車3台のPAEBシステムについて、その性能をテストしました。熱画像融合式AEBセンサ・スイートには、Teledyne FLIRの最新の車載用長波長赤外線(LWIR)サーマルカメラのほか、いずれも車載用のHDレーダーと可視光カメラが搭載されています。一方、2024年式の市販車3台はどれも、レーダーや可視光カメラを組み合わせて使用するものとなっており、サーマルカメラは装備していません。
テストの結果から以下のことが明らかになりました:
• 日中のPAEB性能:熱画像融合式PAEBシステムと市販車のPAEBシステムの両方とも、日中のテストにはすべて合格。
• 夜間のPAEB性能:熱画像融合式PAEBシステムのみがすべての夜間テストに合格し、ヘッドライトの性能に左右されず優れた検知能力を発揮することが実証される。
• 発熱型の衝突実験ダミー人形(PTM):サーマルカメラを使用する今後のPAEB試験プロトコルには、人間の体温をリアルに再現できる市販の発熱型PTMの利用が望ましい。
Teledyne FLIR OEMの製品マネージメント担当副社長Mike Waltersは次のように説明しています。「サーマルカメラは暗闇、影、ヘッドライトや太陽によるグレア、煙、濃霧に対しても見通しが効くうえ、路上の野生動物を検知できるユニーク能力を持ち合わせていることから、実世界の自動車と歩行者の安全性を高めるFMVSS No.127規則の要件に応えられる費用対効果に優れた方法として、OEMメーカーの皆様にはサーマルカメラの統合をぜひ検討していただきたいと思います。サーマルカメラを使えば、ヘッドライトの照射範囲をはるかに超えて状況をしっかり視ることができるため、事前に警告を発しておいて制動距離を長くとったり、検知性能の向上と誤検知の抑制、減速時の快適性・安全性も高めることが可能です」。
また、VSI Labs社の創設者であるPhil Magney氏も次のように述べています。「当社VSI Labsのテストでは、市販車3台すべてが夜間において少なくとも2つ以上のテストシナリオで不合格となりました。これは、現行の最高水準のPAEBシステムを使用しても、すべてのサイズと重量の車両において新基準を満たすことが困難であることを示しています。さらに、実社会の交差点を想定したケースでは困難さがより高まる可能性があり、真陽性率・偽陽性率で見たPAEBの性能にとって車載用サーマルカメラの価値はもっと大きくなるものと言えます。なにより、この当社VSI Labsが行ったテストから、自動車メーカーが2029年までにFMVSS No.127の要件を満たすとともに、歩行者にとってより安全な道路を実現するのに役立つサーマルカメラ技術がすでに存在していることも分かりました」。
VSI Labs社はすべてのテストを2024年9月10~11日の日中と夜間にミシガン州イプシランティにあるAmerican Center for Mobility(ACM)において実施しました。4activeSystems社製の市販車向けの発熱型衝突実験ダミー成人人形(APTM)を使用し、成人の一般的な体温の様子を再現しました。
テストの詳細と結果のレポートは、そのすべてをhttps://www.flir.com/oem/adas/fmvss-no-127-PAEB-test-report/でご確認いただけます。
Teledyne FLIRのADASプログラムについて、詳しくはhttps://www.flir.com/oem/adas/をご覧ください。