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Toshiba News

低電力損失とシステム単純化・小型軽量化を実現する2200 V SiC MOSFETを開発

当社は、太陽光発電(PV)向けに2200 V SiC(炭化ケイ素)MOSFETを開発しました。このデバイスを搭載した2レベルSiCインバーターでは、従来の3レベルSi(シリコン)IGBTインバーターと比べて、高周波駆動かつ低消費電力を実現できました。

低電力損失とシステム単純化・小型軽量化を実現する2200 V SiC MOSFETを開発
今回開発した2200V SiC MOSFETのデバイス構造

従来の3レベルインバーターは、スイッチング素子へのオフ時印可電圧がインバーター動作電圧の半分であるため、低スイッチング損失が特徴です。一方、2レベルインバーターでは、スイッチングモジュール搭載数が少ないために、システムが単純で小型・軽量となります。しかし、スイッチング素子にインバーター動作電圧分が印加されるため、高耐圧の素子が必要です。最近では、PVをはじめとした再生可能エネルギー市場で、入力電圧DC 1500 Vへの引き上げが進んでいることから、低損失な高耐圧素子の需要が高まっています。

そこで当社は、既存SiC MOSFET製品をベースにドリフト層の濃度と厚さを最適化して、DC 1500 Vシステムの2レベルインバーターにも対応可能な2200 V SBD(注3)内蔵SiC MOSFETを開発しました。具体的には、当社の既存品と同等のオン抵抗―耐圧トレードオフを維持しつつ、PV用途で要求される宇宙線に対する高破壊耐量を実現するように設計しています。さらに、既存品と同様にSBDを内蔵させることで、寄生PNダイオード(注4)通電による信頼性低下を抑止し、逆方向導通時の高い信頼性も確認しました。

今回開発したMOSFET素子をパッケージングしたオールSiCモジュールでは、同等耐圧のSiモジュール(Si IGBT+Si FRD(注5))と比べてスイッチング損失が大幅に低くなりました。さらに、損失計算の結果から、このSiCモジュールを搭載した2レベルSiCインバーターでは、従来3レベルSiインバーターよりも低損失となり、2倍のスイッチング周波数駆動時でも37%低い消費電力となることが分かりました。SiCデバイスを用いて高周波駆動が実現したことで、ヒートシンクやフィルターなどの受動素子の小型軽量化も可能になります。


低電力損失とシステム単純化・小型軽量化を実現する2200 V SiC MOSFETを開発
2300 V Siモジュールと今回開発したオールSiCモジュールのスイッチング損失比較(当社調べ)


低電力損失とシステム単純化・小型軽量化を実現する2200 V SiC MOSFETを開発
従来3レベルSi IGBTと今回開発した2レベルSiC MOSFETでのインバーター損失比較(当社調べ)

当社は、本技術の詳細を、ドイツ・ニュルンベルクおよびオンラインで開催されたパワーエレクトロニクスの国際学会「PCIM Europe 2023」で5月11日に発表しました。

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