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SEEPEX

お酒を楽しむために欠かせないのは

大麦や小麦を加工して味わい豊かなビールや蒸留酒を造るため、醸造所や蒸留所では良い原料にこだわります。しかしながら醸造業界は経営上の問題とも格闘しており、今回の新型コロナのパンデミックによって、問題はさらに切迫してきました。特に大企業では、必要な生産設備の最適化が課題となっています。

お酒を楽しむために欠かせないのは

こうした状況のなか、SEEPEXの特許技術Smart Air Injection(SAI)を備えたプログレッシブ・キャビティ・ポンプを利用することで、いかに持続可能性への配慮を高めながらコストを削減できるかが実証されています。

ドイツのピルスナービールの中心地であるルール地方で得られた技術的ノウハウは、たとえば白ビールやライトビールの生産にもしっかり貢献しています。SAI技術を備えた一軸ねじ式ポンプは非常に粘性の高い材料を長距離にわたって搬送するのにとても適しており、とりわけビール製造時の醸造粕を従来よりも効率的に搬送したい場合に最適なのです。この特許技術のシステムなら、モルトやホップなどの醸造粕を搬送するのに非常に少ない圧縮空気とエネルギーしか必要としません。そうした副産物を大きなプラグ状に圧縮して、短い圧縮空気パルスによってサイロや貯蔵タンクへ送ります。

圧縮空気、エネルギー、コストの大幅削減
 SAIを活用すればプロセス効率が大きく向上します。SEEPEXで製品マネージメントを統括する担当者は次のように説明しています。「SAIを使った搬送原理なら、実際にエネルギーコストを持続的に削減できます。圧縮空気の消費量が最大90%減少するため、総消費エネルギーとして最大75%の削減になります。このような当社の技術は、醸造所や蒸留所が大幅に低い操業コストで生産するのを効果的に支えおり、大きな評価を得ています。大企業であれば、この生産工程だけで年間数百万から数千万円を容易に節約できることを考えると、当社のオーダーメイド・ソリューションはどの醸造所や蒸留所の事業にとっても経済的に魅力ある選択肢だと言えます」。

水分を含んだ醸造粕ためのスクリューコンベヤは、同じ目的の従来の空圧搬送システムと比べ、ポンプ駆動のためのエネルギーコストは同程度ながら、圧縮空気の消費量は大幅に少なくなります。

また醸造粕に含まれる水分量が変動したとしても一軸ねじ式ポンプの搬送性能には影響を与ませんので、醸造粕の排出プロセスの信頼性が高まります。SEEPEXの技術部門によると、醸造粕の排出に要する時間を極めて一定に保てることがわかっています。

さらに、配管の摩耗を大幅に低減することもできます。円筒状の塊(以下プラグ)搬送であるため、従来の搬送システムで湿った醸造粕を連続的に低密度搬送する場合に比べて流速が5分の1に減少するからです。

狙い:醸造粕をもっと効率的に搬送する
 大規模な醸造所では毎日数百トンもの醸造粕を処理するため、その空圧搬送のエネルギー消費量は最大で1,000kWhを超えることもあります。このように、これまでは副産物の搬送に、ほぼ連続的に圧縮空気を供給する必要がある従来からの醸造粕用空圧搬送システムを使用していました。

醸造酒の液相(麦汁)を瀘過した後は、マッシュタンやラウターチューン、マッシュフィルターに残った大麦やホップなどの固形物をできるだけ早く排出しなければなりません。通常、こうした醸造粕の含水率は75〜85%、温度は55〜70℃ほどです。多くの場合、取り除いた固形物である醸造粕は、数百メートルも離れた高所にあるサイロに搬送されます。そこからさらに、水分を含んだままの醸造粕をトラックで輸送して、飼料原料のほか、バイオマス発電所の燃料に利用します。

除去ステーションからサイロへの大量の醸造粕を輸送するには、一般に一体型スクリューコンベヤとそれに続く空圧式低密度搬送コンベヤからなる含水醸造粕用の搬送システムで行われています。こうした従来のシステムでは、連続的に流す圧縮空気で醸造粕をライン内にとどめておくため、圧縮空気の消費量が多く、結果的に醸造所のエネルギーコスト増を招きます。

このように含水醸造粕用の搬送システムには、ほぼ連続的に圧縮空気を供給する必要があり、コストが高くつきます。さらにスクリューコンベアの消費エネルギーを合わせると、年間で数百万円のエネルギーコストが発生して、競争の激しいビール業界では大きな足かせとなります。24時間稼働の大規模な醸造所では醸造粕の空圧搬送に100kWものコンプレッサーを使用している場合がありますが、SAI技術を導入すれば年間1000万円を超える節約が実現できます。

解決策:空圧パルスは短く、プラグは長く
 短い空圧パルスなら、間隔を大きくとっても、長いプラグ状の水分を含んだ醸造粕を容易に搬送できます。これは、古き良き時代に活躍したエアシュータによる配送システムのようなものです。SAI技術を使えば、従来システムのスクリューコンベヤをホッパー型の一軸ねじ式ポンプで置き換えて、既存のプラントにシームレスに組み込むことが可能です。この一軸ねじ式ポンプは、適切な長さの醸造粕のプラグが形成されるように圧縮ラインを満たします。その後、数秒間だけ圧縮空気を噴射して、プラグを搬送します。搬送パイプラインの圧力は、常に0.4MPa以下という非常に低いレベルに保たれます。

アイリッシュ・ウイスキーの製造も加速
 醸造粕の搬送は、ビール以外のお酒の製造でも重要なステップです。たとえば、アイリッシュ・ウイスキーも、SEEPEXの技術によって最適な生産速度が実現されています。アイリッシュ・ウイスキーの大手醸造所の中には、貴重なニューポットの製造にSEEPEXの技術を利用しているところもあります。品質で妥協することなく、蒸留所の生産性を大きく高めるための重要な役割をSEEPEXの一軸ねじ式ポンプが担っているのです。

醸造粕の排出が速く行えるようになれば生産稼働率が向上し、稀少なお酒の需要増に応えることができます。多くの場合、すでに設備されている醸造粕のための空圧搬送システムのスクリューコンベアは、投入ホッパー付きの一軸ねじ式ポンプに置き換え可能です。そして、低粘度から高粘度まで、また水分の少ないものから多いものまで、確実に搬送することができます。SEEPEXの技術なら、水分量にもよりますが、醸造粕の排出に必要な時間が最大50%短縮されます。さらに、SEEPEXの一軸ねじ式ポンプはコンパクトな設計で、メンテナンスが容易なことも強みです。また既存システムについては、圧縮空気噴射のバルブ制御システムとプラグ搬送のシステム構成をレトロフィットすることが可能です。これにより、空圧搬送の形態が根本的に変わって、エネルギー効率が大幅に向上します。そうした改良を施したプラントでは連続操業によって、“黄金色の液体”を途切れなく生産しています。ドイツ・ボットロップに本社を置くSEEPEXはすでに、欧州や中国、米国など各地の営業所を通じてSmart Air Injectionを多数納入しています。

技術とその効果
 個々のプロセスの最適化段階において、SEEPEXのチームは、水分を含む醸造粕のプラグ長を適宜調整することで、その醸造所や蒸留所にとって最適な運転状態を着実に確立していきます。プラグが長いほど、システムに必要な圧縮空気は少なくなり、その結果として消費も少なくて済みます。また、十分な圧力を常にリザーブしているため、運用の信頼性が問題になることはありません。醸造粕のプラグの長さを決めるのは、信頼性と効率の面で最適な運転条件を達成するために非常に重要です。たとえば、プラグが短いと信頼性は高いものの、必然的に噴射回数が増えるため圧縮空気の消費量が多くなり、大きなエネルギーを必要としてしまいます。課題は、それぞれのアプリケーションごとに性能・信頼性・コストという重要な3要素がバランスした最適な設定を見出すことです。たとえばプラグを長くすることで、圧縮空気の平均消費量を徐々に小さくしていくことができます。また、空気の流量を調整すればプラグの流れをスムーズにでき、パルス状に働く力を低減できるため、空気圧の特性の最適化を図れる可能性があります。加えて、最適な空気消費量(噴射1回あたりの量)をより簡単に設定することもできるようになります。1回の噴射に必要な圧縮空気の標準的な容積とパイプの容積をほぼ同じにしておけば、長距離であっても、プラグをサイロへ押し出すのにわずかな過圧しか必要としません。

SAI:長距離搬送に最適なシステム
 このテーラーメイドのシステム・ソリューションは、すでに他のアプリケーションでも成功を収めており、たとえば環境分野でも確かなソリューションであると受け止めていいただいています。環境分野では、粘度の高い高密度な物質や乾物重量が中~高程度の物質を最大1kmもの長距離におよんで確実に搬送しなければなりません。こうしたシステムも、プログレッシブ・キャビティ・ポンプによる搬送と空圧プラグ搬送を組み合わせたシステムとなっています。プロセスとしての柔軟性が高く、60~85%の範囲で含水率が変化する物質を、効率を損なうことなくスムーズに確実に送り出します。さらに、既存の自動化ステムや制御システムへの統合も簡単に行えます。
SEEPEXは、ポンプ技術の分野で世界をリードする専門企業の1社です。製品として、一軸ねじ式ポンプとそのポンプ・システムのほか、デジタル・ソリューションをラインナップしています。さらにSEEPEXでは、低粘度から高粘度まで、摩耗促進的な素材や研磨剤そのものを搬送できる革新的なソリューションも提供しています。2021年にSEEPEXはIngersoll Rand Groupの一員となり、重要な搬送機能の構築に加えて、40社以上の有力ブランドからなる産業ソリューションのグローバルサプライヤーの一翼を担ってきました。中核となるIngersoll Rand Inc.(NYSE証券コード:IR)は、起業家精神と親会社としての責任を原動力に、社員・お客様・地域社会の生活をより良くするための活動に献身しています。詳細につきましてはwww.IRCO.com をご覧ください。
 

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