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電源ICの応答性能を極限まで追求できる革新的電源技術「QuiCurクイッカー」を確立

部品点数と安定動作の両面から、電源回路の設計工数削減に貢献。

電源ICの応答性能を極限まで追求できる革新的電源技術「QuiCurクイッカー™」を確立

<要旨>
ローム株式会社(本社:京都市)は、DC/DCコンバータICをはじめ、各種電源ICの負荷応答特性*1(以降、応答性能。後段回路が動作した際の応答速度と電圧安定度)を向上させる新しい電源技術「QuiCurTM(クイッカー)」を確立しました。
電源ICは、安定した電源機能を実現するために常に出力電圧を監視しており、IC内部の基準電圧と比較することで出力電圧を微調整する回路(以降、帰還回路)が搭載されています。この帰還回路が、より素早く応答できれば、入力電圧や負荷電流*1などの変動に伴って発生する出力電圧の変化を短い時間で元に戻すことが可能になります。一方で、あまりに早く応答させようとすると回路動作が不安定になり出力電圧が発振するうえ、出力コンデンサの静電容量(以降、出力コンデンサ容量)によっても応答速度に影響を受けるため、狙い通りの応答性能を実現するのは困難でした。

今回開発した高速負荷応答技術「QuiCurTM」を電源ICに搭載すれば、電源ICの帰還回路において、不安定にならない極限までの応答性能を狙い通りに実現することができます。電源ICに必要な出力コンデンサに対して、静電容量を最小限に抑えて部品点数や基板実装面積を削減可能にするだけでなく、静電容量と出力電圧変動の線形(定数が負の比例関係)な調整を可能にしたことで、仕様変更に伴う静電容量増大時でも簡単に期待する安定動作を実現可能です。このため、部品点数と安定動作の両面から、電源回路設計工数の大幅削減に貢献します。

現在、この「QuiCurTM」技術を搭載した電源ICの製品化を進めており、2022年4月にDC/DCコンバータIC、2022年7月にリニアレギュレータのサンプル出荷を開始する予定です。

<背景>
近年、あらゆるアプリケーションの電子化が進んでおり、電子部品搭載数の増加に伴って、アプリケーションの設計工数も増大しています。そのなかで、電子回路の安定化など、非常に多くの場面で活用されるコンデンサの使用数を低減したいという要望が増えています。また、電源回路においては、仕様変更時の設計工数を削減するために、応答性能に優れ、期待する安定動作を実現できる高品質の電源ICが求められるようになっています。

ロームは、電源ICへの基本要求と言えるこれらの課題を解決するために、電源ICの応答性能を極限まで追求可能にする高速負荷応答技術「QuiCurTM」を確立しました。

<高速負荷応答技術「QuiCurTM」について>
QuiCurTMは、高速負荷応答を実現するロームの独自回路「Quick Current」から名付けた商標です。電源ICの帰還回路において、不安定にならない極限までの負荷応答特性(応答性能)を狙い通りに実現することができます。下記特長によりアプリケーションの電源回路設計工数削減に貢献します。


電源ICの応答性能を極限まで追求できる革新的電源技術「QuiCurクイッカー™」を確立
1. 出力コンデンサの部品点数や基板実装面積を削減可能
QuiCurTMは、負荷電流に対する出力電圧の変動に素早く応答できるため、電源ICに必要な出力コンデンサ容量を低減することで、部品点数や基板実装面積を削減可能です。ローム従来技術と比較した場合、半分以下のコンデンサ容量で同等の応答性能を実現できます。


電源ICの応答性能を極限まで追求できる革新的電源技術「QuiCurクイッカー™」を確立
2. 仕様変更時でも、簡単に期待する安定動作を実現可能
出力コンデンサ容量が大きくなると、出力電圧は安定する一方で瞬時の応答性能(反応するまでの時間)は悪化します。
QuiCurTMでは、出力コンデンサ容量が大きくなっても瞬時の応答性能が変化しないため、出力コンデンサ容量と出力電圧変動の線形(定数が負の比例関係)な調整を可能にしています。仕様変更に伴って、より安定動作を必要とする場合(出力電圧変動をさらに低減したい場合)でも、簡単に期待する安定動作を実現することができます。


電源ICの応答性能を極限まで追求できる革新的電源技術「QuiCurクイッカー™」を確立
<QuiCurTM技術の詳細>
QuiCurTMでは、応答性能を極限まで追求するために、応答速度(制御系)と電圧安定度(補正系)の信号処理を高度に役割分担することで、従来電源ICの帰還回路が抱えていた「不安定領域より低い周波数の領域に使用不可領域が発生してしまう」「出力コンデンサ容量によってゼロクロス周波数*2(f0)が変化してしまう」という2つの課題を解決しました。

1つ目の「使用不可領域が発生してしまう」課題に対しては、帰還回路において使用不可領域が発生しない専用の誤差アンプ*3(増幅器)を用意して解決しました。また、2つ目の「ゼロクロス周波数が変化してしまう」課題に対しては、2段目の専用誤差アンプを用意し、その増幅率(Gain)を電流駆動で調整できる技術を導入しました。接続される出力コンデンサ容量によりゼロクロス周波数は変化しますが、それに合わせて増幅率を調整することでゼロクロス周波数を不安定領域と安定制御領域の極限(境界線上)に常に設定できるようになります。この2つの誤差アンプで役割を分担して構築するシステムは、帰還回路を搭載するDC/DCコンバータICやリニアレギュレータなどの電源ICで幅広く適用可能です。


電源ICの応答性能を極限まで追求できる革新的電源技術「QuiCurクイッカー™」を確立
<超安定制御技術「Nano CapTM」との連携について>
Nano CapTMは、アナログ回路における応答性能の改善と、配線・増幅器の寄生要因極小化により、リニアレギュレータの出力に対して安定制御を提供します。出力コンデンサ容量を従来技術の1/10以下にすることができるため、例えばリニアレギュレータ出力側のコンデンサが不要となり、マイコン側100nFのコンデンサだけで安定動作を可能にします。

QuiCurTMだけではµFオーダーまでしか出力コンデンサ容量を減らせませんが、QuiCurTMとNano CapTMと組み合わせればnFオーダーまで低減することが可能になります。

Nano CapTMの詳細は下記URLをご覧ください。
https://www.rohm.co.jp/support/nano

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