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3Dプリンターの活用でシンシナティ動物園のミーアキャットに野生の食事環境を提供

動物園とGEアディティブによる協働で、エンジニアリングと動物学が出会う.

3Dプリンターの活用でシンシナティ動物園のミーアキャットに野生の食事環境を提供

当プレスリリースは米国時間5月28 日にシンシナティで発表されたニュースの翻訳版です。英語原文はこちらでご覧いただけます。

米国オハイオ州にあるシンシナティ動植物園には、世界的に有名なカバのフィオナをはじめ、2,000頭の動物が飼育されています。このたび、アディティブ・マニュファクチャリング(AM)や付加製造と呼ばれる産業用3Dプリンターの革新的な活用で知られるGEアディティブと連携することで、一部の動物に自然な採餌行動を促すための餌やり器を導入しました。

シンシナティ動物園の動物エクセレンス責任者、デビッド・オーバン(David Orban)氏は次のようにコメントしています。「私たちがよく考えるのは、世話をしている動物たちの自然な摂食行動を園内でどのように再現するかということです。野生では動物は食物を見つけ、捕獲し、食するという順序を経るのですが、それは必ずしも簡単なことではありません。しかし、人間が世話をする環境では、食べ物は常に手に入り、質もバランスもよく、多くの場合、すぐに消費されます。例えば、鳥類や小型の哺乳類に生きた昆虫を餌として提供する際に、昆虫が5分から10分で捕獲され消費されてしまうという課題に直面します。これに対応するために、より複雑な餌やり器を使って餌を探す時間を延ばし、動物の身体活動や精神的な刺激を増やすことで、より自然環境に近い状態で過ごしてもらうという案を持っていました」

オーバン氏が率いるチームは、動物が日々どのように過ごしているか、環境や相互作用の様子を観察し、記録しています。このデータは、シンシナティ動物園での動物の生息環境をよりよく理解するために使用され、飼育、食事、生息地の設計、革新的な改善策の提案など、動物をケアする面で幅広く活用することができます。

シンシナティにあるGEアディティブのコンサルティングサービスAddWorks(アドワークス)のエンジニアたちは、動物園の動物研究者と飼育係が収集したデータを使用して、どうしたら金属3Dプリンターを活用して、動物が野生環境と同じように餌を見つける機会を創り出せるかを検討しました。

GEアディティブの主任エンジニア、シャノン・ジャゴディンスキー(Shannon Jagodinski)は、「プロジェクトを開始する際の打ち合わせで、動物園のチームは動物たちを引きつけ、日々の活動を豊かにするという目標について説明してくれました。このような独自のニーズを持ったユニークなお客様と働くことで、アディティブ製造の可能性に限界は無いということを証明する機会をいただけて、とても興奮しました」 と述べています。

このプロボノ(無償提供)プロジェクトの課題の一つは、お互いにコミュニケーション方法を学ぶことでした。エンジニアと動物学者の間でお互いを理解することと、動物園のチームに3Dプリンターが生み出す可能性を理解してもらうことでした。

ジャゴディンスキーは、「アディティブ製造の技術を活用することで、必要な形状、角度、構造、質感を金属やプラスチックを用いて創り出すことができます。私たちが先ず考慮したのは、動物、飼育係、訪問者の安全性であり、次に動物園からの要望で、餌やり器などの装置は動物園の環境の中で自然に見えるようにしてほしいという事でした」と説明しています。

最初のミーティングの後、GEアディティブのエンジニアと動物園のプロジェクトチームおよび飼育員は、新しい餌やり器の設計について意見交換を始めました。動物園は、飼育スタッフから動物の生活に新しい豊かさをもたらすためのアイデアをできるだけ多く収集しました。

GEのエンジニアは、これらの意見をアディティブ製造で設計する際の具体的な検討事項 (3Dプリンターのビルドプレート上での造形配置や造形、金属粉体材料の除去まで)を念頭に置いて、設計の実現可能性について評価しました。その後、GEのエンジニアから動物園側に2つの案を提案し、動物園はより多くの動物たちに最大の利益をもたらすと考えたデザインを選びました。一部の部品は今年2月に再生チタン粉末を使用して造形されました。

最終製品は飼育係が餌を与えるスタイルを排して、ランダムな時間に餌を飼育地に放出する装置となっており、より野生での採餌行動に近いスタイルを提供するものです。餌やり装置の外部は樹皮のような質感で木の幹を模して製作され、内部にはコオロギを収容する中央の囲いを作り、そこから長さの違う複数の管が外部までつながっており、コオロギが管を通って幹の表面に出るという作りになっています。コオロギがどの管を選択するかによって、装置から外部に出るまでの時間が異なり、その結果、コウロギは時間差で動物に与えられます。

「この餌やり器のコンセプトが選ばれた後、私たちの最初の質問は、コオロギはどのくらいの大きさで、どのくらいの太さの管を這い回る必要があるのか、というものでした。動物園の昆虫チームからフィードバックをもらい、直径が異なる3種類の管を試作造形し、どのサイズが最適かを動物園でテストしました」 と、ジャゴディンスキーは説明します。

COVID-19 の大流行によって世界中の動物園が一時的に閉鎖されている状況ですが、シンシナティのGEアディティブチームは、動物園が閉鎖される前に完成した餌やり装置1台を無事に納品することができました。飼育者たちは閉園期間を利用して、新しい餌やり装置の効果をまず鳥で実験し、次にミーアキャットのような食虫性の小型哺乳類で実験し、試すことができました。

動物園のデビッド・オーバン氏は、「私たちのテストでは、最大数時間にわたり動物たちの採餌時間の様子を観察することができました。これは私たちにとって本当にエキサイティングなことです。なぜなら、私たちはそれを1日に複数回、異なる飼育地で利用できるからです。多くの動物がこの装置に興味を持ち続けているのを観察することができました」 と述べています。

GEアディティブはシンシナティ動物園に追加で数台の餌やり装置を提供する予定です。そのうちの1つは、動物の飼育環境の改善と3Dプリンター技術に関する教育用の特別仕様です。木の幹を再現した樹皮の一部を取り除き、3Dプリンターの技術で製造が可能となった複雑な内部通路が外から見られるようになっており、学校のグループや他の訪問者向けプログラムに活用されます。

GEアディティブのAddWorksコンサルティングサービス統括、デイブ・チャピン(Dave Chapin)は、「アディティブ製造技術を通じて私が学び続けていることは、すべてのお客様が固有の課題に直面しているということです。シンシナティ動物園とのユニークなコラボレーションを通じて、動物たちにポジティブな影響を与えることができたのは素晴らしいことです」と述べています。

ジャゴディンスキーは「コロナウイルスが収束したのち、シンシナティの有名なランドマークである動物園が再開され、家族や友人と再び動物園を訪れることを楽しみにしています。動物の生息地に置かれている装置を指して、あのチタン製のアディティブ部品は私が3Dプリンターで造ったのよ、と紹介したいです」と締めくくっています。

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