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地上設置型深宇宙望遠鏡の補償光学にVicorが採用

マイクロゲートは、地上から超高解像度の天体画像を取得するために、大気の歪みをリアルタイムで補正するビコー製アダプティブオプティクスを、ESOの超大型望遠鏡に搭載しています。

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地上設置型深宇宙望遠鏡の補償光学にVicorが採用

Microgate社は、ESOの超大型望遠鏡向けに極めて精密な補償光学ミラーを製造しています。この光学システムは、高電力密度のDC-DCコンバータモジュールによって駆動され、大気のゆらぎによる歪みを補正してより多くの光を取り込み、高解像度の画像を生成します。

Vicor Corporationは、Microgate社(本社:イタリア)が、同社の巨大望遠鏡の補償光学システムにVicorの出力モジュールを採用したことを発表しました。

宇宙の起源を解き明かしたいという人類の願いに突き動かされ、深宇宙探査は何世代にもわたって人々の想像力を掻き立ててきました。イタリア企業であるMicrogate社とその顧客にとって、深宇宙探査は絶え間ない発見と興奮の旅です。1989年にVinicio Biagi氏とRoberto Biagi氏の兄弟によって設立されたMicrogate社は、プロスポーツやレースイベント向けの高精度計時機器で実績を築いてきました。彼らの究極の精度への情熱は、やがて宇宙へと広がり、地球を拠点とする巨大望遠鏡用のモーター制御システムの発明へとつながりました。

地上最大級の望遠鏡で深宇宙を探る
Microgate社は、地上天文学の政府間研究機関であるヨーロッパ南天天文台(ESO)と提携し、最新で最大となる超大型望遠鏡のアダプティブミラーを共同開発しています。これらの望遠鏡は、新しい銀河や恒星、惑星を探査するための出発点となります。遠い過去の光を捉え、宇宙の起源について新たな発見をすることが、最も重要な課題です。

ESOの新しい超大型望遠鏡ELTには、直径39メートルという圧巻の主鏡が搭載されており、遠方の恒星や銀河から届くわずかな光子を集めることができます。ハッブルやジェームズ・ウェッブの宇宙望遠鏡とは異なり、地上望遠鏡を用いた宇宙起源探査には、次の2つの大きな利点があります。

  • サイズ:新しいELTは、ハッブル宇宙望遠鏡より23倍も大きい。
  • フレキシビリティ:地上望遠鏡はどこにでも設置できアップグレードが容易ですが、宇宙望遠鏡はメンテナンスが大変です。

ESOの望遠鏡は、数々の画期的な発見をしてきました。例えば、ESOで観測していた天文学者たちは、銀河中心部の極めて強い重力場の中の恒星の動きを追跡し、そこに超大質量ブラックホールがあることを裏付ける有力な証拠を発見しました。この発見は、2020年のノーベル物理学賞を受賞しました。

大気でゆらぐ波面と闘う補償光学
光が大気を通過するとき、大気のゆらぎの影響を受け波面収差が生じ、その結果、画像の鮮明さが損なわれます。Microgate社の補償光学技術は、この大気ゆらぎによる影響を補正します。主鏡が捉えた光は副鏡(アダプティブミラー)へと反射され、アダプティブミラーが物理的に変形することで、いわゆる「平らな」波面を復元します。Microgate社は高性能の非接触型リニアモータを使いミラーを機械的に変形させ、入射する波面を物理的に操作することで大気ゆらぎによる歪みを補正します(短いデモ動画はこちら)。ESO-ELTプロジェクトでは、この操作をリアルタイムで制御するための、すべての装置とソフトウェアをMicrogate社が提供しています。

ESO-ELTのM4ミラーは直径2.4メートル、厚さ約1.9mmで、専用の特殊ガラスで作られています。このミラーは、ミラーを変形させるための力を発生する高精度の電流制御ドライバと、永久磁石と対になったボイスコイルモータを備えています。ミラーの表面全体では5,316個のモータが30ミリメートルの間隔(軸間距離)で配置されて、操作されます。


地上設置型深宇宙望遠鏡の補償光学にVicorが採用
副鏡は厚さ約1.9mmの特殊ガラスで作られたアダプティブミラーです。銅色のコイルはリニアモータです。

アダプティブミラーは、モータのコイルが発生する磁場の上に物理的に浮いています。そのため、個々のコイルの制御電流でミラーを局所的に変形させ、その形状を補正することが可能です。これには、モータコイルと同じ数のナノメートル(ミリメートルの百万分の一)単位の精度の、高感度の静電容量式センサ(位置センサ)が用いられます。さらに、約100kHzの周波数で動作する電子システムを使うことで、わずか1ミリ秒でミラーの形状を完全に再構成することができます。その結果、望遠鏡を宇宙に打ち上げることなく、極めて鮮明な画像を得ることができます。

補償光学システムを駆動するVicorの高電力密度モジュール
補償光学システムにおいて高精度な制御と放熱処理は極めて重要であり、局所的な大気のゆらぎを防ぐために、露出したすべての表面の温度を周囲温度に近い状態に保つ必要があります。また、スペースが限られるため、電力システムの課題の難易度はさらに高くなります。


地上設置型深宇宙望遠鏡の補償光学にVicorが採用
Microgate社 は Vicor のDC-DC 電源モジュールDCM3623 シリーズを使い、ミラーを機械的に変形させ、大気ゆらぎによる歪みを物理的に補正します。このプロセスは、画像品質の向上に不可欠です。

Microgate社は、このシステムの電力供給にVicorのDC-DCコンバータモジュールDCM3623シリーズを採用しました。電源システム基板は、ガス冷却式コールドプレートの裏側に取り付けられており、各モジュールは最大36のモータチャネルに電力を供給できるので、複雑な配線は不要になります。

Microgate 社のハードウェアエンジニアである ゲラルド・アンゲラ氏は次のように述べています。「Vicor の高効率・高電力密度のモジュールはとてもコンパクトで信頼性が高く、回路基板上のスペースをほとんど取りません。この小型電源コンバータは、我々にとって最高の選択肢です。すでに10 年以上に渡り使用していますが、今のところこれに匹敵する代替品はありません。」

共同で宇宙の謎を解き明かす
Microgate社 は、深宇宙探査を通じて宇宙の秘密を解き明かすことに取り組んでおり、これらの次世代超大型望遠鏡の補償光学システムはVicor の高電力密度電源モジュールによって駆動されています。Microgate社は Vicor や他の国際的なパートナーと協力し、ヨーロッパ南天天文台などの組織のために、宇宙の起源に関する手がかりの解明に取り組んでいます。こうした共同作業により、世界を変えるような発見が続々となされています。

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