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Rohm Semiconductors News

150V GaN HEMTにおける業界最高※8Vまで高めたゲート耐圧技術を開発GaNデバイスのゲート耐圧課題を解決し、基地局・データセンター向け電源の低消費電力化や小型化に貢献

ローム株式会社(本社:京都市)は、産業機器や通信機器をはじめとする各種電源回路向けに、150V耐圧のGaN HEMT*1(以下、GaNデバイス)における業界最高の8V高ゲート耐圧(ゲート・ソース定格電圧)*2技術を開発しました。

150V GaN HEMTにおける業界最高※8Vまで高めたゲート耐圧技術を開発GaNデバイスのゲート耐圧課題を解決し、基地局・データセンター向け電源の低消費電力化や小型化に貢献

<要旨>
GaNデバイスは、シリコンデバイスと比較して低いオン抵抗値と高速スイッチング性能に優れていることから、基地局やデータセンターなど各種スイッチング電源の低消費電力化や小型化に貢献するデバイスとして活用が期待されています。しかしながら、ゲート・ソース定格電圧が低く、スイッチング時に定格を超えるオーバーシュート電圧が発生することがあり、デバイスの信頼性に大きな課題がありました。
こうした中、今回ロームは、独自の構造によりゲート・ソース定格電圧を一般的な6Vから8Vまで高めることに成功。これにより高効率を求めるGaNデバイス採用電源回路の設計マージン向上および高信頼化が可能になります。また、低寄生インダクタンスでデバイスの性能を引き出しつつ、基板実装しやすく放熱性にも優れる専用パッケージも合わせて開発しており、既存シリコンデバイスからの置き換えや実装工程でのハンドリングを容易にします。
ロームは、今後、本技術を用いたGaNデバイスの開発を加速し、2021年9月の製品サンプル出荷を予定しています。

<背景>
近年、IoT機器の増加で需要が拡大しているサーバーシステムなどにおいて、電力変換効率の向上や装置の小型化が重要な社会的課題のひとつとなっており、パワーデバイスにさらなる進化が求められています。
ロームは、業界をリードするSiCデバイスや特長ある各種シリコンデバイスの開発・量産を進めるとともに、中耐圧領域での高周波動作に優れるGaNデバイスの開発も行ってきました。今回、既存GaNデバイスの長年の課題であったゲート・ソース定格電圧を高める技術を開発したことで、各種アプリケーションに対して、より幅広いパワーソリューションの提案が可能となります。


150V GaN HEMTにおける業界最高※8Vまで高めたゲート耐圧技術を開発GaNデバイスのゲート耐圧課題を解決し、基地局・データセンター向け電源の低消費電力化や小型化に貢献


150V GaN HEMTにおける業界最高※8Vまで高めたゲート耐圧技術を開発GaNデバイスのゲート耐圧課題を解決し、基地局・データセンター向け電源の低消費電力化や小型化に貢献

<開発品GaNデバイスの特長>
ロームが製品化を進める開発品GaNデバイスは下記特長を備えています。

1.独自の構造によりゲート・ソース定格電圧を8Vまで拡大
一般的な200V耐圧以下のGaNデバイスはゲート駆動電圧5Vに対して、ゲート・ソース定格電圧が6Vであり、その電圧マージンが1Vと非常に狭くなります。デバイスの定格電圧を超えると、劣化や破壊など信頼性に関する問題が発生する可能性があり、ゲート駆動電圧には高精度の制御が必要となるため、GaNデバイス普及の大きな課題となっていました。
ロームは、この課題に対して独自構造を採用することで、ゲート・ソース定格電圧を一般的な6Vから業界最高の8Vまで高めることに成功しました。これによりデバイス動作時の電圧マージンが3倍になり、スイッチング時に6Vを超えるオーバーシュート電圧が発生したとしても、デバイスが劣化しないため、電源回路の高信頼化に貢献します。

2.基板実装しやすく放熱性にも優れたパッケージを採用
本GaNデバイスには、信頼性・実装性に対する実績が確立されている放熱性に優れた汎用性の高いパッケージを採用しています。そのため既存シリコンデバイスからの置き換えや実装工程でのハンドリングを容易にします。また、銅クリップ接合のパッケージ技術を用いて寄生インダクタンス値を従来パッケージから55%低減したことで、高周波動作を想定した回路設計時にデバイスの性能を最大限引き出します。

3.シリコンデバイス比でスイッチング損失65%低減
本GaNデバイスは、ゲート・ソース定格電圧の拡大や低インダクタンスパッケージを採用しながらデバイスの性能を最大限引き出しており、シリコンデバイスと比較して約65%のスイッチング損失低減を実現します。


150V GaN HEMTにおける業界最高※8Vまで高めたゲート耐圧技術を開発GaNデバイスのゲート耐圧課題を解決し、基地局・データセンター向け電源の低消費電力化や小型化に貢献

<アプリケーション例>

  • データセンターや基地局などの48V入力降圧コンバータ回路
  • 基地局パワーアンプ部の昇圧コンバータ回路
  • D級オーディオアンプ
  • LiDAR駆動回路、ポータブル機器向けワイヤレス給電回路


150V GaN HEMTにおける業界最高※8Vまで高めたゲート耐圧技術を開発GaNデバイスのゲート耐圧課題を解決し、基地局・データセンター向け電源の低消費電力化や小型化に貢献

<用語説明>
*1)GaN HEMT
GaN(窒化ガリウム)とは、次世代パワーデバイスに用いられる化合物半導体材料のこと。一般的な半導体材料であるシリコンに対して物性に優れており、高周波特性を活かし採用が始まっている。
HEMTとは、High Electron Mobility Transistor(高電子移動度トランジスタ)の単語の頭文字を取った略称。

*2) ゲート・ソース定格電圧(ゲート耐圧)
ゲート・ソースの間へ印加できる最大電圧のこと。
動作に必要な電圧を駆動電圧と呼び、特定のしきい値以上の電圧を印加すればGaN HEMTは動作された状態になる。

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