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分散衛星アレーによる次世代通信基盤技術

インターステラテクノロジズ株式会社が、Direct-to-Device通信を視野に入れた非結線型アレーアンテナの地上原理実験に成功。

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分散衛星アレーによる次世代通信基盤技術

インターステラテクノロジズ株式会社は、複数の人工衛星を協調動作させて高利得アレーアンテナを構成する非結線型フェーズドアレイ技術について、地上原理実験に成功した。本成果は、スマートフォンなどの地上端末と直接通信する次世代衛星通信(Direct-to-Device、D2D)を実現するための基盤技術として位置付けられている。

本研究成果は、2026年2月15日から19日に米国で開催される半導体分野最大級の国際会議であるIEEE ISSCCにおいて発表される予定である。

研究の背景:衛星フォーメーションフライトと通信容量
インターステラテクノロジズは、ロケット事業および通信衛星事業を通じて、社会実装を前提とした宇宙インフラの構築を進めている。同社が注力するフォーメーションフライト技術では、超々小型衛星が互いの位置・姿勢を制御しながら協調飛行することで、単一の巨大アンテナとして機能する構成を目指す。

この方式では、1万~10万機規模の衛星群をアレーアンテナ素子として動作させることで、従来の宇宙用アンテナでは実現困難であった高利得・大容量通信が可能になるとされている。2024年以降、同社は総務省委託研究「電波資源拡大の研究開発(JPJ000254)」の一環として、国内大学と連携し基礎研究を進めている。

非結線型フェーズドアレイという技術課題
一般的なアレーアンテナは、複数のアンテナ素子を物理配線で接続し、厳密な位相制御により信号を合成する。一方、フォーメーションフライト型アレーアンテナでは、各アンテナ素子が独立した衛星として分離して存在するため、素子間の接続は無線通信に依存する。

この構成は、屋内外のカバレッジ改善を目的とする分散アンテナシステム(DAS)とは異なり、高利得を得るための厳密な同期と信号合成が求められる。そのため、本研究ではこの方式を「非結線型フェーズドアレイアンテナ」と定義し、新たな統合制御・信号処理技術の確立を目標としている。


分散衛星アレーによる次世代通信基盤技術
複数の衛星を模擬した実験装置。各衛星の中央にはアンテナが、内部には集積回路がそれぞれ搭載されている。この実験装置では各衛星は枠に固定されているが、実際の飛行では分割され、配置を電磁石で制御する

地上原理実験の内容と技術的成果
今回の地上原理実験は、将来的な大規模衛星数への拡張を前提に、衛星間の情報伝送方式および動作タイミング調整手法を総合的に検証することを目的として実施された。共同研究には、東京科学大学 白根研究室、岩手大学 本間・村田研究室、マイクロウェーブファクトリー株式会社が参加している。

実験では、超々小型衛星への搭載を想定した信号処理用アナログ集積回路とアンテナを試作し、複数台の模擬衛星を用いたアレーアンテナ構成を構築した。その結果、スマートフォンで使用される周波数帯の電波について、送受信が成立することを確認した。

本実験は小規模構成であるものの、衛星数増加に伴う拡張性を考慮した設計であり、実用性能を持つ大規模非結線型フェーズドアレイアンテナ実現に向けた技術的妥当性を示すものとされている。

今後の技術展開
インターステラテクノロジズは、今回の実験成果を踏まえ、アンテナ利得、位相同期精度、信頼性の向上に加え、さらなるスケールアップに取り組む方針である。将来的には、フォーメーションフライトを用いた高速・大容量の衛星ブロードバンド通信を通じ、地上端末と直接接続可能な新しい通信インフラの確立を目指す。

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