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09
'25
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ルネサス、誘導型位置センサIC 3製品を発売
新しいICはウェブベースの設計支援ツールにより設計を簡素化し、産業用、ロボット用、医療用アプリケーションでの誘導型位置センサの活用を可能にします。
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ルネサス エレクトロニクス株式会社は、このたび、高精度かつ堅牢でコスト効率が極めて高いモータの角度センサである誘導型位置センサ (インダクティブポジションセンサ:IPS)ICとして、3つの新製品を発売、量産を開始しました。新製品は、ロボットやファクトリオートメーションで使われる高価な磁気/光学式エンコーダの置き換えに最適な高精度用途の「RAA2P3226」、産業モータやアクチュエータなど高速モータ制御用の「RAA2P3200」、電動工具や医療機器など低速モータ位置検出用の「RAA2P4200」です。新製品により、産業、ロボット、医療システムなどの幅広いアプリケーションに誘導型位置センサを活用できるようになります。
Webベースの「誘導型位置センサ コイル最適化ツール」を提供
誘導型位置センサは、高精度な位置検出ができる上、磁石を使わないため周辺磁場に対する高い耐性を持っています。センシング素子として、可動部に金属ターゲットを組み込み、プリント配線版にコイルパターンをレイアウトしたものを使用するため、設計の柔軟性が高く、小型、軽量な設計が可能で、コストパフォーマンスにも優れています。一方、設計者にとっては、アプリケーションごとに最適なセンシング素子をカスタム設計しなければならない点が、導入に際しての最大の課題の1つでした。
今回、このセンシング素子の設計を容易化するWebベースの「誘導型位置センサ コイル最適化ツール」を提供開始しました。このツールは、コイルレイアウトやシミュレーション、チューニングを自動化することで、オンライン上で試作を繰り返すことができます。このツールを活用すれば、性能を正確に予測できるだけでなく、実際に製造する際の制約も踏まえてコイルレイアウトを最適化できます。これにより、誘導型位置センサの利点を享受しながら、従来比で極めて容易にフルカスタムのセンシング素子を開発できるようになるため、早期に高性能なセンサ開発が可能になります。
新製品について
今回の3製品はいずれも、誤差がフルスケールの0.1%未満という高精度でターゲット位置を検出します。RAA2P3226とRAA2P3200の2製品は、最大回転数600k rpm(電気角)まで対応し、伝搬遅延は100ns未満に抑えているため、高速モータアプリケーションに適しています。上位製品のRAA2P3226は、最大19ビットの解像度と0.01°の精度を備えた絶対角度検知が可能なデュアルコイルセンシングをサポートし、ロボティクスアプリケーションに求められる高精度のパフォーマンスを実現します。RAA2P3200は高速モータの制御用に最適化されています。RAA2P4200は医療機器や電動工具などの低速アプリケーションを対象としています。3製品全てに自動キャリブレーション機能とリニアライズ機能を搭載しており、スムーズにシステムレベルの性能向上が可能です。
車載用新製品の発売予定について
この3製品に加え、2025年第4半期中には車載用IPSのRAA2P452xとRAA2P4500も発売する予定です。デュアルチャネルのRAA2P452xをルネサスのマイコンと組み合わせればASIL Dに準拠した機能安全設計をサポート可能です。この車載用製品により、モータ制御の精度を損なうことなく、低速のボディ制御、シャシー制御をコスト効率よく実現できるようになります。
ルネサスのセンサ事業部のVice PresidentであるLeopold Beerは次のように述べています。「当社の新しいWebベースのコイル設計ツールは誘導型位置センシングの常識を塗り替えます。これまで、誘導型位置センサの開発では、技術的専門知識をチップのサプライヤに頼るしかありませんでした。しかし、この直感的なツールを活用すれば、開発者自身がセンシング素子をフルカスタマイズし、自動的に微調整してシステムレベルで最高精度と堅牢性を実現できます。これによってハードルが大幅に下がるため、専門知識の有無にかかわらず、より多くのお客様が自信を持って誘導型位置センシングを活用できるようになります。」
新製品の主な特長
RAA2P3226
- 多関節ロボット、物流/産業用ロボット、協働ロボット向けデュアルコイルIPS
- 出力インタフェース:UART、ABI、Step-Dir、I²C
- 最大19ビットの解像度、0.01°の絶対精度(バーニア内蔵)
- エアギャップ変動を補正する自動ゲインコントロール(AGC)
- 16ポイントリニアライズ機能で精度を向上
- 起動時のTrue Power-On(TPO)位置情報
- 回転軸上・軸外、円弧、リニアセンサへの実装が可能
- 動作温度範囲:-40°C~125°C
- 動作電圧:3.0V~5.5V
RAA2P3200
- モータ整流、電動自転車、産業用ロボット、協働ロボット向けの高速・低レイテンシIPS
- 出力インタフェース:SPI、UART、ABI、UVWまたはStep-Dir
- エアギャップ変動を補正する自動ゲインコントロール(AGC)
- 16ポイントリニアライズ機能で精度を向上
- 回転軸上・軸外、円弧、リニアセンサへの実装が可能
- 動作温度範囲:-40°C~125°C
- 動作電圧:3.0V~5.5V
- 過電圧、逆極性、短絡に対する保護機能
RAA2P4200
- 低速のサービスロボット、電動工具、医療用途向けのシングルコイル設計IPS
- 出力インタフェース:アナログ、PWM、I²C
- エアギャップ変動を補正する自動ゲインコントロール(AGC)
- 16ポイントリニアライズ機能で精度を向上
- 回転軸上・軸外、円弧、リニアセンサへの実装が可能
- 動作温度範囲:-40°C~125°C
- 動作電圧:3.0V~5.5V
- 過電圧、逆極性、短絡に対する保護機能
- ZMID4200デバイスの後継品