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チリを代表する送電事業者TRANSELEC社が、その電力システムを強化して操業の安定性を改善

PcVue SCADAプラットフォームが、チリ国内の電力網で最大規模のアルト・ハウエル変電所の制御に採用されました。

チリを代表する送電事業者TRANSELEC社が、その電力システムを強化して操業の安定性を改善
アルト・ハウエル変電所

Transelec社について

Transelec社は、チリ北部のアリカ・イ・パリナコータ地方から南部のロス・ラゴス地方まで、60カ所以上の変電所を約10,000 kmにおよぶ送電ラインで結ぶという同国の主要な送電事業者です。エネルギー部門での70年以上にわたる実績がその高い専門技術を裏付けるとともに、500名を超える従業員の雇用を守るのを可能にしています。同社は、チリの主要な送電企業として、北部から南部の大部分の地域に電力を届け、その人口の98%をカバーしています。これは、チリ国内の電力網の84.5%にあたります。

Transelec社の事業は、電力網の継続的な強化によって安定性をいっそう高め、さらに再生可能エネルギーの接続を可能にしてエネルギーミックスによる脱炭素化を図っていくことです。なお同社は、Canadian Pension Plan Investment Board(カナダ年金制度投資委員会)、British Columbia Investment Management Corp(ブリティッシュ・コロンビア州投資管理公社)、Public Sector Pension Investment Board(カナダ公務員年金投資委員会)、China Southern Power Grid International(中国南方電網社)からなるコンソーシアムが所有しています。

Transelec社は主な役割として、常に安定した電力網を維持し、発電所からの高電圧送電ラインを通じて都市や鉱工業の需要家に届けています。一方、変電所では、その電力を低電圧に変換してから、一般利用者に配電してます。こうして、それぞれの生活水準の向上、ひいては国の発展に貢献しているのです。

同社は様々な変電所を運営していますが、かなでもアルト・ハウエル変電所はサンチアゴの都市部に位置し、設備容量2,554 MVAというチリ国内電力網で最大の容量をもつ変電所として際立った存在です。さらに、同国の送電に使われる500kV・220kV・154kV・110kV・60kV・13.2kVというすべての電圧レベルに対応したヤードも備えています。

電力SCADAの構築プロジェクト
このプロジェクトに選ばれたのがSCADAシステムの開発と実装の専門企業SCADATECH社です。SCADATECH社は、電力システムの総合的エンジニアリング・ソリューションの一部として、アルト・ハウエル変電所の自動化に汎用プラットフォームのPcVue Solutionsを選び、その7つのヤードのモニタリングと制御を可能にしました。

Transelec社はこれまで、ヤードそれぞれに備わる制御室から、そのヤードをモニタリングできるローカルなHMIは設置されていませんでした。そのため、オペレータは制御装置で直接モニタリングを行う必要がありました。こうした状況を受けて、SCADATECH社はPcVueのスケーラブルで多機能プラットフォームであるSCADAソリューションを提案しました。これなら将来的な仕様を盛り込めるとともに、操作を各ヤードの制御室に移すことで、オペレータが難しい操作を行う際のリスクを軽減できるからです。

技術的には、このアプリケーションによって、同プロジェクトの基本プロトコルに採用したDNP 3.0プロトコルに加え、MMS(製造メッセージ仕様)プロトコル規格IEC 61850による直接統合が可能になるうえ、PcVueプラットフォーム内で既存のプログラムを応用して利用することもできます。さらに、Transelec社の採用する規格にしたがって、変電所の単線図を電圧レベルに応じて動的に色を変えて表示し、さらにこの色によって様々な種類のアラームを示すなどの柔軟性も生まれます。

このHMIステーションなら、同様に電気システムのリアルタイムな状態や測定値も可視化ができます。さらに、既存の電気システムを完全に制御・監視しながらフィールドのIED機器に対してリモート制御や操作を行えます。総合的な単線図やアラーム/イベント表示パネル、通信ダイヤグラムなど様々なディスプレイの制御と監視のために、スクリーン右側にメニューを配して各表示エリア間の切り替えを容易にし、オペレータがその場で各業務を実行できるようにしています。


チリを代表する送電事業者TRANSELEC社が、その電力システムを強化して操業の安定性を改善
HMI通信画面

今回のSCADA構築プロジェクトでは、DNP 3.0とIEC 61850規格のMMSプロトコルを利用し、PcVueソフトウェアの組込みアプリケーションを運用できるよう各ヤードにはタッチスクリーンを設置しました。このアプリケーションによって、TELEGYR RTUの改造に使ったNTX-U57制御装置からデータが収集できます。これにより、RTUのデータベースを関連する各ディスプレイにDNP 3.0プロトコルで送信可能にもなりました。

トポロジーとしてはスター型を採用しているため、ディスプレイはヤードごとに独立した接続を備えています。したがって、データ収集は変電所サーバ室との光ファイバ回線に依存せず、各ヤード内でスタンドアローン機器として動作するという利点が生まれました。このローカルなHMIに統合された機器には、GE D25高電圧制御装置、保護継電器(ABB、Siemens、General Electric、 MICOM各社製)、CISCO社のネットワーク・スイッチ、Schneider Electric社のイオン計などが挙げられます。このようにPcVueの大きなメリットの一つが、マルチブランド対応プラットフォームとして、どんなメーカー製の機器にも簡単に適応が図れることです。


チリを代表する送電事業者TRANSELEC社が、その電力システムを強化して操業の安定性を改善
タッチスクリーン上の総合単線図

このプロジェクトのインテグレータを担ったSCADATECH社は、PcVue Solutionsが様々な電気系プロトコルを元々サポートしているため、提案に選んだと説明しています。こうした機能があればシステムの可用性が大幅に向上し、失敗の原因となる要素を排除して開発期間を削減できます。電気分野で通信プロトコルを組み込む際には、一般的に異なるアプリケーションやインターフェイスを構成していますが、それが不要になるからです。ほかの選択肢と比べて、PcVueプラットフォームは非常に魅力的な価格で最も高い品質水準を実現しています。そのため、今回の入札プロセスにおいても、SCADATECH社の支持を得やすかったのです。

Transelec社にとって、送電システムのオペレーショナル・エクセレンスに加え、何より同社の協力企業や下請け企業の安全性に対する責任は最優先事項です。一方、PcVueはPCのセキュリティを保証するための欠かせない要素を備えています。そのため、PcVueは作業者の安全レベル向上を促進し、あらゆる変電ヤードにとって遠隔制御を大きく改善できる重要な要素となりました。

SCADATECH社は現在、PcVueを用いたアプリケーションの開発を進め、アルト・ハウエルの変電所全体をその中央のSCADAシステムから総合的にモニタリングできるよう現地の制御システムの拡張を図っています。これにより、たとえTranselec社のメインSCADAシステムに障害が発生しても、オペレータが制御上の判断を下せるようになります。このシステムは、7つの変電ヤードとSNMPプロトコルによるネットワークの現場監視、システムに関連するすべての制御機器のモニタリング(すべてのヤード間に設置された90台以上のNTXU57それぞれの温度とステータス)、変電所ゲートウェイと変電ヤード間通信の一般情報など、変電所の総合的な状況を表示するディスプレイを全部で3つ備えています。


チリを代表する送電事業者TRANSELEC社が、その電力システムを強化して操業の安定性を改善
NTXU57カード

また、通信プロトコルとしてIEC-60870-5-104を採用の予定です。これは、Transelec社の中央SCADAシステムで同じ既存のデータベースをもとにモニタリングを実行するためで、同システム内での通信が正しく動作しているかも検証できるようになるでしょう。

実際、Transelec社はシステムインテグレータのSCADATECH社とともに、アルト・ハウエル変電所の電気制御とモニタリングに対し、変わることなくPcVueソフトウェアの信頼性を頼りにしています。様々な分野のコンピュータ・アーキテクチャに適応できる能力に加えて、PcVueが備えるデータ分析の容易さが明らかになり、オペレータは迅速な意思決定が可能なことから、同社の他の場面へもこのプラットフォームが拡張されるまでになりました。

プロジェクトの特徴

課題

• 設備容量2,554 MVAというチリ国内電力網で最大規模
• チリの送電網で利用されるすべての電圧レベル500kV・220kV・154kV・110kV・60kV・ 13.2kVに対応した7つのヤード
• この7つのヤードそれぞれに付随した制御室から、各ヤードをモニタリングできるローカルなHMIが無い

メリット
• スケーラブルで多機能なプラットフォームで、将来の仕様の取込みが可能に
• オペレータのリスクを軽減
• DNP 3.0に加えて、MMSプロトコル規格IEC 61850での直接統合
• 電気システムのステータスと測定値をリアルタイムに可視化
• IEDフィールド機器と既存の電気システムをリモートに制御
• ヤードごとに独立に接続されたディスプレイが、スタンドアローン装置としても動作
• 稼働の継続性と協力企業や下請け企業の安全性のため、コンピュータのセキュリティを保証
• 高いシステムの可用性
• オペレータによる迅速な意思決定

補足資料:
- PcVueエネルギー管理SCADAシステムと、いかに持続性を高めるかについて詳しく
- 「Solutions for Power〔電力業界のためのソリューション〕」をダウンロードください

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